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物損事故の全損と分損

カテゴリ: 交通事故

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 本日は、物損事故の全損と分損の違いについてお話します。

 

1 自動車の全損と分損

 

 交通事故により自動車が破損した場合、それが全損なのか、それとも分損なのかによって、事故の扱いが変わってきます。

  

 全損には、自動車が修理不可能な状態になってしまった物理的全損と、修理自体は可能であるものの、修理費が事故当時の自動車の時価を上回る経済的全損とに分かれます。

 

 一方、事故車両が修理可能であり、かつ、その修理費が車両の時価を下回っていることを、保険実務上、分損と呼びます。

 

2 全損と分損の違い

 全損と分損とでは、交通事故の加害者に請求できる損害賠償の範囲が異なります。

 

 分損の場合、加害者に対して、適正な修理費相当額を請求することができます。

  

 一方、全損の場合、たとえ修理自体は可能(経済的全損)の場合であるとしても、自動車の時価相当額を上回る修理費は請求できません。

 

 自動車の時価は、原則として、同一の車種・年代・型・同程度の使用状態・走行距離などの自動車を中古市場で取得し得る価格のことであり、レッドブック等を参考に判断します。

 

 また、全損の場合には、自動車の買替が必要となるため、買替費用のうち、自動車取得税、事故車両の自動車重量税の未経過分、検査・登録手続費用、車庫証明費用等を請求することができます。

 

 一方、分損の場合、修理が可能であり、買替が必要とは認められないことから、被害者の判断で買い替えるとしても、買替費用を加害者に請求することはできません。

 

 全損と分損の違いを把握されていないと、加害者に請求できる範囲を誤ってしまうおそれがあります。

 

 交通事故でお悩みの方は、是非、弁護士にご相談ください。

通院付添費

カテゴリ: 交通事故

 

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 本日は、通院付添費について、お話します。

 

1 付添の必要性

 

 交通事故で負傷された方は、治療のために通院する必要があります。

 

 通院の際、年齢・負傷状況などの理由により、近親者の付添いが必要になることがあります。

 

 近親者は、家族の身を案じ、時には仕事を休んでまで通院に付き添います。

 

 最高裁は、被害者が、受傷により付添看護を必要とし、近親者の付添い看護を受けた場合には、現実に付添費の支払いをせず、その請求を受けていない場合であっても、被害者は付添費相当額の損害を被ったものとして、加害者に対してその賠償を請求することができるとして(最判昭和46年6月29日民集25巻4号650頁)、一定の要件のもとで、通院付添費の請求を認めています。

 

2 通院付添費が認められるケース

 

 通院付添費は、通院に付添いの必要性が存在することが要件となります。

 

 自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」といいます。)では、12歳以下の子供の通院等に近親者等が付き添った場合には、看護の必要性について医師の証明を要することなく、通院看護費を支払うとしています。

 

 裁判実務でも、12歳以下の子供については、付添の必要性を認め、通院付添費を認める傾向にあります。

 

 一方、被害者の年齢が12歳を超える場合、未成年であったとしても、常に付添いの必要性が認められるとは限りません。

  

 被害者の症状や医師の指示の有無などから、付添の必要性が認められる必要があります。

 

 子どものことを心配して、仕事を休んでまで付き添われているご両親も多くおられます。

 

 しかしながら、付き添いをするに当たっては、事前に医師の指示書を取り付けるなどの注意が必要です。

 

 年齢以外にも、脊髄損傷により四肢に麻痺が残っている、下肢を骨折しているなど、その症状から、通院のために付添看護が必要であることが認められる場合には、通院付添費を請求することができます。

 

3 通院付添費の金額

 

 自賠責保険の支払基準では、近親者による通院看護料(付添費)は、1日当たり2100円(令和2年3月31日までの事故は2050円)とされています。

 

 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)では、通院付添費は1日当たり3300円、ただし、事情に応じて増額を考慮することがある、とされています。

 

 被害者の年齢・症状から、近親者が休業してでも通院に付き添う必要があった場合には、休業損害相当額が、通院付添費として認められることがあります(4歳の幼児の通院に母親が付き添った例として、東京地判平成8年12月10日。)。

  

 ただし、休業損害相当額の請求が認められるかどうかについては、慎重な検討が必要となります。

 

 ご家族の通院への付添いを希望される方は、一度、弁護士にご相談ください。

交通事故は警察へ届け出を

カテゴリ: 交通事故

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 本日は、交通事故に遭われた際の警察への届け出について、お話します。

 

1 交通事故に遭われた際は、必ず、警察に届け出る必要があります。

 

 事故の際、特に怪我はないと判断された場合や、車両の損傷がほとんどないなどの理由で、警察に通報せず終わらせてしますことがあります。

 また、加害者が、運送業など、運転免許が必須となる職業に就いている場合、免許停止・取消しが死活問題となるため、通報しないよう懇願されることもあります。

 

 しかしながら、交通事故の被害を警察に届け出ない場合、様々な不利益を受けることになるため、必ず届け出なくてはなりません。

 

2 車両等の運転者は、交通事故が発生した場合、負傷者を救護する義務(道路交通法72条1項前段)と、警察官に対して、事故が発生した日時及び場所等を報告する義務を負います(道路交通法72条1項後段)。

  

 たとえ怪我人がいなかったとしても、事故の発生を警察に届け出ることが、法律上義務付けられているのです。

 

 この報告義務に違反すると、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります(道路交通法119条1項10号)。

  

3 警察に対して交通事故の発生を届け出ないと、事故現場の捜査が行われず、交通事故証明書も作成されません。

 

 このため、後になって、加害者が事故の存在を否定してきた場合、事故の発生を証明できるとは限りません。

 

 事故の発生を証明できたとしても、警察の捜査が行われない場合、実況見分調書も物件事故報告書も作成されないことから、ドライブレコーダーの映像が存在しているような場合を除き、事故態様を証明する資料がないことがあります。

 

 その結果、被害者の記憶とは異なる事故態様が認定されてしまい、補償が受けられないおそれさえあります。

 

3 以上述べたとおり、交通事故に遭われた際、警察に届け出ることは、法律上の義務であるうえ、届け出ないことによる不利益を受ける可能性が高いです。

 

 このため、交通事故に遭われた際は、必ず警察に届け出ましょう。

代車使用料

カテゴリ: 交通事故

代車使用料

 

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 本日は、代車使用料についてお話します。

 

1 乗車中に交通事故に遭われた場合、自動車が損傷することがほとんどです。

  

 自動車を修理するためには修理業者に預ける必要があり、その間、当該自動車を使用することができなくなります。

 

 このため、代車が必要となりますが、レンタカーを借りる場合には、レンタカー代が必要となります。

 

 このレンタカー代(代車使用料)を相手方に請求することができるかどうかが問題となります。

 

2 代車使用料は、代車を使用した場合には必ず認められるわけではなく、代車を使用する必要があり、かつ、現実に代車を使用した場合に、その使用料が相当な範囲内であれば、損害として認められます。

 

 たとえば、自家用車を通勤にしか使用していなかったところ、勤務先までの通勤に公共交通機関を使用したとしても支障がない場合には、代車を使用する必要性が否定される可能性があります。

 

3 代車を使用することができるのは、「相当な期間」に限られます。

  

 一般的には、代車の使用期間として、修理に必要な期間として1~2週間程度、買替えが必要となる場合には、1か月程度とされています。

 

 特段の事情がないにも関わらず、事故後、修理も買替えもしないまま代車を使用し続けた場合、上記の期間を超えたレンタカー代について相手方に請求できない可能性があるため、注意が必要です。

 

 例外的に、修理に着手することが遅れたことについて、特段の事情が存在する場合には、上記の期間を超える代車使用料の請求が認められることがあります。

 

 たとえば、修理業者は、修理に着手する前に、加害者側保険会社との間で、修理の方法・範囲・修理費について協議し、協定を結んだうえで修理に着手することが一般的であるところ、この協議が長引いたため、その間修理に着手できなかった等の特段の事情がある場合には、修理に必要な期間を超えて代車使用料が認められたことがあります(神戸地裁平成30年4月19日判決等)。

 

4 事故の被害に遭われた方の中には、当然、加害者側がレンタカー代を負担してくれると考えておられる方も多くおられますが、実際には、代車料の請求のためには、上記の各要件を満たす必要があります。

 

 このため、どれだけの期間であれば、相手方に対して代車使用料請求できるのか、事前に確認しておく必要があります。

  

 事故後、代車が必要な方は、お早めに、弁護士にご相談ください。

家事従事者の休業損害

カテゴリ: 交通事故

家事従事者の休業損害

 

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 本日は、家事従事者の休業損害についてお話します。

 

1 性別・年齢を問わず、現に家族のために家事労働に従事する者のことを、家事従事者といいます。

 

 家事従事者=専業主婦と考えられている方もおられますが、実際には、ご家族のために家事をされている方であれば、主婦に限定されません。

 

2 通常、休業損害は、交通事故により負傷した結果、仕事を休まざるを得なかったことにより、給与が減額される等して収入が減ってしまった場合に発生します。

 

 家事従事者が、ご家族から家事に対する対価を受け取ることはほとんどないでしょう。

 

 このため、家事従事者が負傷により休業したとしても、収入が減少するわけではありません。

 

 しかしながら、一人暮らしを経験された方はご存じかと思いますが、炊事、洗濯、掃除等の家事労働はかなりの重労働であり、体力も時間も必要とします。

 

 日頃は、ご家族が無償で行ってくれている家事を、仕事として他者に依頼するとなれば、相応の報酬を支払わなければなりません。

 このため、最高裁判所は、家事労働に金銭的価値を認めており(最高裁昭和50年7月8日判決)、家事従事者が交通事故により家事に従事できなくなった場合には、加害者に対して休業損害を請求することが認められています。

 

3 休業損害の算定にあたっては、まず、基礎収入を算定する必要があります。

 

 実務では、家事従事者の基礎収入は、女性労働者の学歴計の全年齢平均賃金を元に算定されています。

  

 例えば、賃金センサス令和元年の女性労働者の学歴計の全年齢平均賃金は、388万0100円であり、1日当たりおよそ1万0630円となります。

 

 ただし、被害者がご高齢の場合には、その家事の負担量にもよりますが、年齢別平均賃金を元に算定される傾向にあります。

 

4 家事従事者の休業損害に関しては、休業した範囲が争点となることが多いです。

 

 入院中であれば、全く家事を行えないことが明らかです。

 

 しかしながら、ご自宅で療養されている場合、症状次第では、休み休みであったとしても、家事を行うことは不可能ではありません。

 

 また、リハビリ治療や痛み止め薬の効果により、症状が緩和されれば、家事に回せる労力も増えていきます。

 

 これらの理由から、家事従事者が、どれだけの期間、どの程度家事に従事できなかったのか、という争点が生じます。

 

 実務では、実際に通院した日数の全部または一部を休業期間として算定する方法や、事故後の症状の経過・程度を勘案し、治療期間における休業割合を算出する方法(事故後30日間の休業割合は70%、その後の30日間の休業割合は40%、残りの90日間の休業割合は20%と算定するなど)がとられることが多いです。

 

 訴訟となった場合、裁判官が、当事者の医療記録等を元に、労働能力の減少を判断し、休業損害を算定します。

 

5 相談に来られる方の中には、加害者側保険会社から示談案の中に、家事従事者としての休業損害が全く考慮されていない方もおられます。

 

 休業損害が請求できる可能性を見過ごしたまま示談してしまうことがないよう、是非、一度弁護士にご相談ください。

痛みを我慢しないでください

カテゴリ: 交通事故

痛みを我慢しないでください

 

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

 日常生活でも、仕事でも、忍耐力が必要になる場面は多々あります。

 

忍耐力は、社会生活を送るうえで、とても大切です。

 

 しかしながら、交通事故の被害に遭われた方が、痛みを我慢した場合、不利益に扱われてしまうこともありますので、注意が必要です。

 

1 通院を控えてしまうことによる不利益

  

  交通事故の被害に遭われた方は、様々な傷害を負います。

 

  しかしながら、打撲や捻挫といった負傷の場合、レントゲンやMRI検査の画像からは、傷害の有無が明らかにならないことがあります。

 

  画像からは痛みの原因が明らかにならない場合、被害者の症状の有無は、本人の申告や神経学的検査のほか、通院状況などから推認されます。

 

  通院してリハビリ治療を受ければ、痛みは緩和されます。

 

  このため、被害者が継続的に通院していると、事故による負傷の痛みが続いていることが推認されます。

 

  ところが、被害者の中には、仕事の都合等から、怪我の痛みを我慢して、ほとんどリハビリを受けられない方がおられます。

 

  すると、通院しないのは、リハビリを受ける必要がない、つまり、それほど痛みが残っていないのだとして、加害者側保険会社から、早期に治療費を打ち切られてしまうおそれがあります。

 

  また、傷害慰謝料の算定にあたっては、入通院する必要があった期間が重要な考慮要素になります。

 

  このため、同じ車両で事故に遭い、同じくらい重い怪我を負われたとしても、症状を和らげるためにリハビリを続けた方と、最初に数日通院しただけで、痛みを我慢して通院しなかった方とでは、慰謝料額に大きな差が生じてしまいます。

 

  以上述べたとおり、交通事故により傷害を負いながら、痛みに耐えて通院を控えておられる方は、治療費や慰謝料の面で不利益に扱われてしまうおそれがあります。

 

  お体のためにも、できる限り通院を続けてください。

 

2 痛みを隠してしまう場合

  

  事故に遭われた方の中には、痛みがあるにも関わらず、周囲に心配をかけたくない、大事にしたくない、といった気持から、不調を申告されない方がおられます。

 

  主治医の先生にも痛みを申告しないと、把握をすることができないため、診断書や診療録にも記載されません。

 

  すると、事故から時間が経過した後になって、耐えきれずに痛みを申告したとしても、その症状が事故によるものなのか、因果関係に疑義が生じてしまい、治療費の請求や、後遺障害の認定が認められなくなるおそれがあります。

 

  主治医の先生から適切な治療を受けるためにも、お体の不調は、全て伝えるようにしましょう。

 

3 このように、交通事故の被害者が我慢をすると、いくつもの不利益を被るおそれがあります。

 

  仕事の都合などもあるものと思いますが、できる限り、通院を続けるようにしてください。

給与所得者の休業損害

カテゴリ: 交通事故

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

本日は、給与所得者の休業損害についてお話します。

 

1 休業損害の発生

 

  交通事故の被害に遭われた方は、入通院のため、あるいは、自宅療養のため、仕事を休まざるを得ないことがあります。

  

  給与所得者の給与は、業務の対価として支払われるものであり、欠勤した場合は減額されてしまいます。

 

  あるいは、入通院などのために有給休暇を使用することもあります。

 

  この場合、事故に遭わなければ別の用途に使うことができた有給の権利を失ってしまうという財産上の損害が生じます。

 

  これらの給与の減少や財産上の損害が休業損害に当たります。

 

2 損害額の算定方法

  

  休業損害の金額を算定するためには、勤務先に依頼して、「休業損害証明書」という書類を作成してもらいます。

 

  休業損害証明書には、欠勤・遅刻・早退・有給の日数、休んだ期間の給与の支給の有無、事故前3か月間の稼働日数(実労働日数)・給与額(付加給を含む)が記載されています。

 

  1日当たりの休業損害の金額は、事故前3か月間の給与の支給金額の合計額を算出し、これを同期間の稼働日数で割ることにより、算出します。

 

  この日額に休業日数を乗じることにより、休業損害を算定することができます。

 

3 休業損害算定の注意点

 

  加害者側保険会社から示談案の提示を受ける際は、休業損害の内訳をご確認ください。

 

  示談案では、休業損害証明書に記載された支給金額について、稼働日数ではなく、90日という日数で割ることにより1日当たりの金額を算定されていることがあります。

 

  しかしながら、この90日の中には所定の休日も含まれているため、上記の計算では、労働時間に応じた給与が反映されないまま、休業損害の日額が減少してしまいます。

 

  従来、休業損害の日額を算出するにあたり、90日で割るのか、稼働日数で割るのかについては議論がありました。

 

しかしながら、平成30年損害賠償額算定基準(赤い本)下巻の講演録において、給与所得者が完全休業せず、就労しながら通院を行っている場合には、90日ではなく、稼働日数で割ることにより日額を算出することが示されています。

 

4 休業損害は、事故により仕事を休まざるを得なくなってしまったことに対する賠償であり、適正な金額を請求する必要があります。

 

  交通事故でお悩みの方は、是非、一度弁護士にご相談ください。

示談交渉と訴訟

カテゴリ: 交通事故

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

本日は、示談交渉と訴訟についてお話します。

 

1 交通事故被害について損害賠償を請求する手段としては、主として、示談交渉と訴訟が考えられます。

 (この他の手段としては、民事調停やADR(裁判外紛争解決手続)等がございます。)

 

 示談交渉とは、加害者(ほとんどの場合は加害者側が加入している保険会社)との間で、裁判所等の第三者機関を通すことなく、賠償請求の交渉を行うことです。

 

 民事訴訟は、裁判所に対して訴訟を提起して損害賠償を請求する手続きです。

 これらの手続きには、それぞれ特徴があります。

 

2 弁護士が、交通事故に関する損害賠償請求を受任する場合、まずは示談交渉から開始することがほとんどです。

 

 示談交渉のメリットは、訴訟手続きと比較して、早期に被害弁償がなされる可能性が高い点にあります。

 

 このため、まずは示談交渉を行ったうえで、訴訟を提起する必要があるかどうかを検討していくことになります。

 

 示談交渉の場合、事故態様や過失割合に争いがなく、損害額の算定が複雑でなければ、損害額算定に必要な資料が揃ってから、概ね2か月以内には結論が出ます。

 (この結論には、示談成立のほか、示談交渉では解決が困難と判断することも含まれます。)

  

 一方、デメリットとしては、示談交渉はあくまでも話し合いであるため、加害者側が提案に応じなければ、賠償を受けることができません。

 慰謝料に関しては、民事訴訟を提起した場合の基準と比較して1~2割ほど低い金額でなければ、加害者側保険会社が示談に応じない傾向にあります。

 

 また、事故態様等に争いがある場合、加害者側は、できる限り自己に有利な事故態様・過失割合を主張してくるため、被害者側が納得できる金額で示談できる可能性が低まります

 

3 示談交渉では解決に至らない場合、民事訴訟を提起することを検討します。

 

 民事訴訟最大の特徴は、公正中立な立場の裁判官が、当事者が提出した証拠を元に事故態様や負傷状況を認定し、過失割合や損害額を判断することです。

 

 裁判官は、あくまでも中立の立場から判断するため、加害者側の不合理な事故態様の主張が退けられることにより、被害者が救済される可能性がある一方で、被害者にとって不利な事実が認定され、示談交渉段階よりも低い損害額が認定されてしまうおそれもあります。

  

 このため、訴訟を提起する場合には、その見通しについて、事前に弁護士に相談をしておくことを強くお勧めします。

 

 示談交渉では、加害者側保険会社は、裁判をした場合の基準額よりも低額での示談を求めてくるため、民事訴訟の方が高額な慰謝料が認定される可能性が高まるというメリットがあります。

 

 訴訟手続きのデメリットとしては、解決までに時間がかかるという問題があります。

 

 まず、訴訟提起に至るまでに訴状や証拠資料の作成・収集が必要となります。

 

 また、訴訟手続では、概ね1か月から1か月半に1回の頻度で期日が設定されるため、進捗もそれに伴う速度となります。

 

 このため、民事訴訟を提起した場合、解決までに少なくとも1年、上訴の可能性も含めれば、数年はかかるということにご留意いただく必要があります。

 

4 以上述べた通り、交通事故は、それぞれの解決手続に特徴があるため、その見通しを慎重に検討する必要がございます。

 交通事故でお悩みの方は、是非、一度弁護士にご相談ください。

ドライブレコーダーについて

カテゴリ: 交通事故

 

 

名古屋の弁護士の能勢洋匡です。

 

本日は、ドライブレコーダーについてお話します。

 

1 事故態様の争い

 

 交通事故の法律相談では、ご相談者と相手方との間で、事故態様に関する言い分が異なっていることがあります。

 

 事故による負傷や、交通事故に遭ってしまったという衝撃により、記憶が曖昧になっていることもあれば、事故を起こした側が、責任から逃れようと、警察に対して意図的に記憶とは異なる説明をすることもあり得ます。

 

 第三者の目撃者が存在し、かつ、警察の実況見分に立ち会っていれば、どちらの言い分が正しいか説明してもらえるのですが、常に目撃者が存在するとは限りませんし、また、目撃者が絶対に記憶違いをしていないとは限りません。

 

2 事故態様と過失相殺

 

 事故態様は、交通事故に関する損害賠償請求を行う際、非常に重要となります。

 

 なぜなら、事故態様は、当事者間の過失割合に影響するからです。

 

 事故の発生について、被害者にも過失が存在する場合、その過失割合に応じて、過失相殺が適用されます。

 

 過失相殺は、休業損害や慰謝料だけでなく、治療費等を含めた一切の損害の合計額に対してなされるため、重傷を負い、治療費が高額となった方に過失相殺が生じると、賠償額が大きく減少してしまう可能性があります。

 

 自分の記憶とは異なる事故態様の元に過失割合が決定され、満足な賠償を得ることができないのでは、金銭的にも、精神的にも、被害者は救済されません。

 

 そのような事態に対する自衛方法として、自動車にドライブレコーダーを搭載することが考えられます。

 

3 ドライブレコーダーの重要性

  

 ドライブレコーダーは、機械的に映像を記録するため、交通事故が発生した前後における相手方車両の動き、信号の色、道路の状況等に関する重要な資料となります。

 

 訴訟においても、ドライブレコーダーの映像は、証拠価値が非常に高く、裁判官の心象に大きな影響を与えます。

 

 また、近年増加しているあおり運転被害への備えにもなります。

 

 自動車を運転している以上、どうしても、交通事故に巻き込まれる可能性はなくなりません。

 

 万が一の事態に備えて、ドライブレコーダーを搭載することを、是非ご検討ください。

弁護士費用特約の適用範囲

カテゴリ: 交通事故

 本ブログをご覧いただきありがとうございます。 


 弁護士の能勢洋匡(「ひろただ」と読みます。)と申します。
 名古屋市に本部を置く,弁護士法人心に所属しております。

 

 本ブログでは,法律の知識だけでなく,弁護士業務の中で思うことなど,様々な話題を発信していきたいと思います。

 

 皆様に,弁護士を身近に感じていただき,お気軽にご相談いただける一助になれば,幸いです。

 

1 弁護士費用特約とは

 

 本日のテーマは,弁護士費用特約です。

 

 弁護士費用特約とは,契約者等が,自動車に関わる交通事故に遭った際,弁護士への法律相談料や,加害者に対して損害賠償を請求する際に生じる弁護士費用を,ご契約の保険会社が負担する保険です。

 

 保険会社によりますが,1事故1名あたり,法律相談料は10万円まで,弁護士費用は300万円まで補償するものが多いです。

(実際の補償内容は,各保険会社にお問い合わせください。)

 

2 弁護士費用特約の必要性

 

 私は,法律問題の中でも,交通事故に関する事案を中心に取り扱っています。

 

 交通事故事案は,弁護士にご依頼いただければ,損害賠償額が増額される可能性が高いなど,状況が好転する傾向にあります。

 ところが,事案によっては,賠償額が増額したとしても,弁護士費用を差し引けば,費用倒れとなる見通しの事件もあります。

 そのため,弁護士に依頼することができず,適正な金額の賠償を受けられない被害者の方がおられます。

 

 もし,弁護士費用特約を利用できれば,保険会社が弁護士費用を負担するため,本人負担では費用倒れのおそれがある事案でも,ご依頼いただくことができます。

 

3 弁護士費用特約を利用できる方

 

 弁護士費用特約は,契約者ご本人だけでなく,その配偶者,同居の親族,別居の未婚の子も適用の対象になっていることが多いです。
(実際の適用範囲は,各保険会社にお問い合わせください)。

 

 万が一,交通事故の被害に遭われたときは,ご自身が弁護士費用特約に加入していなくとも,ご家族の自動車保険に弁護士費用特約が含まれていないか,ご確認ください。

 

 また,稀にではありますが,ご契約の火災保険や生命保険に弁護士費用特約が付されていることがありますので,そちらもご確認ください。
 

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